親になる前に 〜児童虐待の要因と解決策について

望まない妊娠について

児童虐待を予防するための教育 1
〜望まない妊娠について〜

皆さんはニュースで『子どもを残して遊びまわり、あげくに餓死させた』とか『できた子どもを次々と産んでは床下に埋めた』などと聞くと、まず、何と思われますか?
『なら、産むなよ!』と、まず思うのではないでしょうか。
でも、産んでしまう人がいる。

なぜ育てられないのに産むのか?

なぜ、育てることもできないのに、産んでしまうのか。
子どもの虹情報センターの資料によりますと、親に殺された子どもの数は平成24年で99人、平成25年には90人・・・となっており、その要因として第一に望まない妊娠が挙げられています。

望まない妊娠の背景として考えられるのは

  • 中絶するお金がない(借金・定職がない)
  • 婚姻関係のない相手の子
  • 不貞による妊娠
  • 妊娠を相手に告げると別れ話になるから、ズルズルと
  • 母親の精神状態

などです。

望まない妊娠について

“できちゃった結婚”と、この“望まない妊娠”は、延長上にはありますが、違いがあるので整理しておきます。
“できちゃった”は望んでいない予定外の妊娠であっても、女性の側も妊娠を喜び、男性の側も喜ぶことができて、さらに経済的にも何とかなれば、“順番が違うだけ”で済まされますし、男性側が望んでいなくても女性が『一人で育ててみせる!』と頑張る場合もあります。そういった場合においては“望まない”わけではなく子どもに対しての愛情は確保されるでしょう。
ただ、産みたいと女性が頑張って産んだ後に収入が確保できたら、何とかなります。ところが高校出たてで、働いて何年にもならないという状況だと『産休・育休取ります!』が許されるかというと、難しい職場が多いのが現実です。さらに出産・育児に関する費用の蓄えができるほどの年齢ではないでしょう。
生活の困難さのあまりに苛立ち、さらに赤ちゃんが泣き止まない時など、自分でもどうしようもなく荒れて、『何で、泣き止まないのよ!もうっ!!』となり、虐待になってしまうかもしれません。
赤ちゃんを望んでいても、“若年のできちゃった”の困難さが大きいことは間違いないことです。
そういうある種、典型的なストーリーが妊娠前に知識としてあれば、防ぐことのできる悲劇があるかもしれません。

正しく避妊できる男を育てる

また、我々教員が耳にすることがある『避妊して!と相手に言うと嫌われそうで言えなかった。』ということから始まった妊娠に幸せな未来があるでしょうか。
避妊してと言えないような相手との関係は、そもそも危ういものと判断して男を切ることができない。そういう女性の弱さがあるならば、正しく避妊ができる男を育てよう!!!
というのが虐待予防学習の1つ目のポイントです。

男子校での授業

私の勤務校は工業系のほぼ男子校です。女子は3〜8%です。私が担当する家庭科の授業は、1992年に男女共修になるまでは、女子だけが必修科目で、男子はその間、体育の授業がありました。
家庭科=女子のためのもの、というイメージはまだまだ根強いかもしれません。

まず、考えたのが“正しく避妊できる男を育てる”です。

今どきの高校生は、避妊についてよく知っている子もいれば、曖昧にしか知らない子もいます。
例えば「薬のんだら、流せるんやろ?」と、アフターピルについて魔法の薬のように勘違いしている生徒もいます。もちろん医者で処方されないと買えないことや効果にタイムリミットがあること、強い副作用のことなどを説明します。
「腹、どついたら、いけるって先輩言うてたで」と耳を疑うようなことを言う生徒もいました。もちろん激怒して、「自分の娘が相手の男に良いようにされて、妊娠して、堕せって言われて、腹どつかれて、血流しながら、痛さでのたうちまわって、挙句に一生子どもできない体になったらどうよ!!」と言いましたが・・・・。
正確な知識について携帯でいくらでも簡単に調べられる時代ですが、いい加減な仲間内の情報に振り回されてしまうことも多いようです。

男としての責任

一通り、避妊について解説したのちに次のようなことを語ります。
「結婚する気もないのに避妊しない、という無責任な男がこの世にはいるんだよ。だから、しっかり自分自身で自分を守れるようにしようね。避妊してって言えないような相手だと、関係性がまだ浅いってことだし、“大丈夫つけなくても、いけるって”っていう男が、あなたのことを大事にしてると思う?大事に思ってたらちゃんと避妊してくれるはず。そんないい加減な男、もし中絶っていうことになったら、逃げるよ。だから、しっかり避妊してって言わないといけないし、自分も基礎体温計って、危ない日にはしない!って拒否しようね。」ということは、女子が半数の前任校でも言っておりましたので、男子にはその裏返しを言います。
「結婚する気がないなら、完璧に避妊する。もし、万が一できたら逃げない。女の子はタダでさえ、お腹の子を殺すことに傷ついてるし、その上、一生子どものできない不妊症になる危険もある。だからせめてお金だけは全部準備して、医者に付き添うくらいはしよう。中期中絶なら20万前後。安い医者に行ったら雑な手術になるかもしれないからケチったらダメ。高い?ならゴム買った方が安いよね。ゴム使えばOKじゃないよ。始めから付けて、爪で傷つけないように。殺精子剤もつけて。相手の子が排卵日前後でないか確認して、危なそうな日は絶対にしない・・・・」という感じです。

“望まない妊娠”は、子、親どちらにとっても不幸である

また避妊の方法を教える前に、中絶最中の超音波映像を撮ったDVD(胎児の声なき叫び)を見せて、中絶は生きている一人の人間を殺すことという事実を目の当たりにさせ、命の大切さに対する認識をしっかり持たせてから、避妊の方法を教えると『絶対に避妊しないといけないなあ』となりますし、『できたら、堕せばいい』という安易な考えは払拭されます。
ただし、このDVDは女子が見ると、産んでも困る状況でも“絶対中絶はしない!”となってしまうので、男子にだけ見せることができると良いのですが・・・

あと、産婦人科情報も、“安ければよい”と高校生が考えるのは当然のことですが、ネットで調べさせてみて、何故こんなにも中絶の費用に差があるのか考えさせてから、答えを導き出していきます。そうすると、もし中絶するなら早ければ早い方が良いことや、時間をかけて施術してくれる医者の方が良いことや、そもそも妊娠しないにこしたことはないと理解してくれます。
また、中絶できる期限を教える時、妊娠の初日(最終月経の開始日)についても、間違いやすく中絶ができなくなることにも関わることなので、時間をかけて伝えています。

“望まない妊娠”は子どもにとって不幸であることはもちろん、親にとっても不幸なことです。
避けさせることができるなら、避けさせたい。その一助になれば、という思いが生徒に届いているのか・・・・。

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